2018年5月5日に行われた、第49回クラシカルギターコンクールを最初から最後まで見てきました。
全体を通して観戦したのはいつぶりだったか、なかなかに楽しい時間を過ごせました。
結果(敬称略)は、
1位 茂木拓真(1)
ソナタ(ブローウェル)
2位 坂本和奏(4)
ゴヤの24のカプリチョス〜XII(テデスコ)、組曲〜IV,V(エチュ)
3位 山口莉奈(5)
ソナタ〜I,II,IV(テデスコ)
4位 佐々木巌(2)
ソルの主題による変奏曲(リョベート)、ハンガリー幻想曲(メルツ)
5位 松島淳(3)
ソナタ・ジョコーサ(ロドリーゴ)、練習曲第1番(レゴンディ)
6位 杉田文(6)
ソナタ〜I,II,IV(テデスコ)
※本選課題曲:リゾンの泉(コスト)
演奏順は、茂木、佐々木、松島、(休憩、)杉田、山口、坂本
名前のあとの括弧に書いたのは私が予想した順位です。結構実際の審査と差が出てしまいました。
佐々木さんが2位だと思ったのは、全体を通してミスらしいミスもなく、難しいパッセージを全て弾ききって、ヴィルトゥオーゾ感を出していたからです。全体をガンガン弾いている感じだったので、音楽が少し単調になってしまっていたのは否めないかもしれません。
松島さんも同じように減点するようなポイントが見当たらなかったのと、明るくて良い音がしていたので3位くらいに入ってくるかなと思っていました。
このお二方の順位が思ったより伸びなかったのは、本選の審査基準として、ただ弾けるだけでなく、プラスアルファの表現力、その人独自の魅力といったものが重視されたためと思われます。
そう考えると、坂本さんと山口さんが上位に入ってきたのも頷けます。
6位だった杉本さんの演奏も繊細な表現でとても素敵だったのですが、他の5人と比べて音量が小さく、特に低音が弱く感じました。ソロのリサイタルだったら気にならなかったと思うのですが、コンクールはどうしても他の出場者と比べられてしまう場ですから、そうなると不利だったのかなと思います。
本選に進んだ方はどなたも自分の表現を持っていて素晴らしかったのですが、その中で、1位だった茂木さんの演奏はディテールが作り込まれていて、世界観に圧倒的な深みがあったと思います。ダイナミックレンジも最も広く、迫力もあり、かつ説得力のある演奏でした。
ちなみに、二次予選の課題曲はダウランドのファンタジアP1でした。版指定がなく、カポなしで弾く人、2カポで弾く人、3カポで弾く人も(確か)いたと思います。また、19世紀ギターらしきギターを使われている方もいました。
当然カポなしの方がギターはよく響くのですが、個人的にはカポを使った少しくすんだ響きの方が、ダウランドには合っているのかなと思いました。
とはいえ、そこは評価に影響はしていない様子で、本選に通ったのは傷の少ない演奏をした人たちだったと思います。
今回全体を通して観戦して思ったのは、二次予選は確実な技術が、本選は技術を前提として、音楽性や何か光るものが重視されているのだなということです。
講評でも、自分の表現を磨くことが大事という趣旨の話がありました。